京都三条大橋から江戸日本橋を東海道五拾三次で目指す旅。今回は静岡市の府中宿からスタートし、江尻宿、蒲原宿を抜け、薩埵峠から最高の富士山を眺望した。歌川広重の由比の画はここ薩埵峠付近から富士山を眺める風景。
由井 薩埵嶺
歌川広重 東海道五拾三次 由井 薩埵嶺 保永堂版
江戸時代は由比を由井と表記する事が多かったようだ。薩埵嶺とは薩埵山のことで山地が急傾斜で海へと落ちている地形で、もともと東海道は山裾の海岸を通っていたが、荒天時には通行できなくなることから、江戸時代前期に山腹に新しい道が切り開かれた。画の左には垂直に切り立った断崖絶壁の上から、旅人が手をかざして富士を眺めている。
薩埵峠の展望台から富士を望む。断崖絶壁からの海との隙間には東名高速、国道1号、東海道線が肩を並べて線を描く。
今は海を埋め立てて、わずかな隙間をJR東海道本線と国道1号線、東名高速道路が走る日本の大動脈。薩埵峠のルートができる以前は、この断崖絶壁の切り立った山からすぐ海というロケーションを、波のタイミングを計りながら岩場を歩いて通り抜けていたらしい。
ダイナミックな富士山の手前の山並みは大丸山と大平山。
いつまでも見ていたい景色。
薩埵峠からの富士山を満喫。薩埵峠を後にし、由比の町へと富士山をチラ見しながら坂道を下って行く。
みかん畑を下って行く。興津からは階段急坂だったが、由比からはやや緩やかな坂道。ハイカーもいるので、ゆっくり~ゆっくり~下ってく~♪
峠道を下ると、由比の町へと入って行く。屋根の向こうには富士山がちょいと顔を出す。
由比宿
上段:今昔マップon the web 明治28年測図 明治42年発行地形図 下段:Google Map 2018
天保14年(1843年)の東海道宿村大概帳によると、由比宿は、本陣1軒、脇本陣1軒、旅籠屋32軒、宿内家数160軒、海辺に細長い町並みが形成されていた。江戸日本橋まで、あと38里21町45間。
由比の町並みは旧街道らしい趣が残っている。
みかんを売っていたり。
格子戸とうろこ模様の戸口が美しい古民家。
ここは、東海道あかりの博物館。たき火からかがり火へ。ローソクから電灯へ。というのがキャッチフレーズ。日本の古今のあかりに関する物品、文献が数多く展示されている。入館料500円、パスする。
名主、小池邸。領主と百姓との接点の重要な役割を担う名主をつとめた小池家の母屋。名主の主な仕事は、年貢の取立・管理・戸籍事務・諸書類の作成や他村・領主との折衝などを行っていた。東国では「名主」、西国では「庄屋」と呼ばれた。
明治時代に建てられた母屋は、たたき土間と六畳の整形四間からなる田の字形四つ目取りの部屋で、大黒柱の建つ伝統的な民家の造り。
熱燗が旨かろう。
由比の駅前には富士山に向かって桜えびのモニュメント。そうとうな桜えびフィーチャーっぷり。
伝統の湘南色を簡易塗装で継承する、グリーンとオレンジの帯の211系普通電車。
桜えびとしらすのお店が目に付く。あぁ腹減った。オニギリ買ったが、まだ朝めし食ってない事に気付く。よし、桜えびを食おう。
旧東海道から漁港へ行くには、JR東海道線と国道1号線の高架下をくぐらねばならない。漁港に大量の漁船が並んでいるが、漁港の沖には東名高速が走っていて海は見えない。
由比漁協にある「浜のかきあげや」。まだ午前中なのに車やバイクで来た観光客で賑わっている。
桜えびのメニューは、かきあげ、どんぶり、みそ汁がメジャーな感じ。しらすも旨そう。全部食いてぇ。
全部食べたい欲張りさんには「ミニ丼セット」がいいかも。桜えびとしらすののった由比どんぶりと、沖漬け丼、桜えびのみそ汁、そして桜えびのかき揚げが付いて1,000円なり。新鮮な桜えびはほのかに甘みがあり、海苔とネギとの相性がバツグン。3分の2ほど食べたところで、ポットに入っているダシをかけてダシ茶漬けにしてみる。コレがまた旨い。シラスもふわっと柔らかく、磯の香りが口いっぱいに広がる。極めつけは桜えびのかき揚げ、揚げることで海老の風味が何倍にも増幅され、サクサク感とともに味覚を刺激する。お腹いっぱい頂きました。
腹いっぱいで再スタート。ここはおもしろ宿場館。江戸時代にタイムスリップしたような、かつての由比宿の旅籠、桶屋、寺子屋などの町並みを再現している。利用料420円、パスする。
由比本陣公園には広重美術館が隣接している。浮世絵はパツキン外人さんも興味津々。広重美術館の収蔵品は、東海道シリーズ『東海道五拾三次之内』(保永堂版東海道)、『東海道五十三次』(隷書東海道)、『東海道五十三次之内』(行書東海道)の他、晩年の傑作『名所江戸百景』など、風景版画の揃物の名品を中心に約1,400点を数える。入館料510円、広重の旅なのに、後ろ髪を引かれながらもパスする。
名物は、桜えびとみかんだね。
由比の東に建つ神沢川酒造。銘柄は正雪。創始者が捜し求めた神沢川の水は、急斜面の山から一気に下りて来るため、鉄、マンガン、マグネシウムをほとんど含まない軟水。その水で醸し出す、軽くてまるい味。それが神沢川 正雪。