お遍路はただのお寺参りとは違うのか?
空海が1200年ほど前に修行をした四国の各霊場を、その教えを守りながらともに巡り、行を納めていくこと。これは代々木八幡大日寺住職の大栗道榮 大僧正の言葉。
ここまで東寺から高野山奥の院、そして自転車遍路として区切り打ちで一番札所霊山寺から十七番井戸寺まで巡ってきた。しかしどうだ、自転車旅のスタンスでお参りもそこそこにご朱印を頂きスタンプラリーかのごとく先へ進んでいる。それはそれで楽しいのだが、大栗道榮 大僧正の言葉がなんだか心に響く。
今の自分、これではお遍路じゃあないな。
四国八十八箇所遍路について、本やウェブで解説や作法がたくさん記載されている。しかしいまひとつピンとこない。真言やお経は音で唱えるためどういう意味なのかが分からない。分からないものを唱えていても修行とはならないように思う。音を言葉として意味をつかむため調べてみる。
発願
「世のために、自分を大きく生かしたい。」
「全てのものは我がものではない、思うようにはならない。」
「同行二人」
「迷故三界城」「悟故十放空」「本来無東西」「何処有南北」
「生きている間、ずっと満たされない渇きを感じるのが、人間なのだ。」
「おのが心を措きて、何処に拠るべぞ、よく整えられし己にこそ、得がたきよるべを得ん。」
奥深く、非常に興味深い。
という訳で、作法と読経についてまとめてみる。この作法でいくと1つのお寺に30分以上は掛かる。見どころを見たり写真を撮ったり休憩したり買い食いしていると1時間近くは滞在することになるな。先を急ぐものでも無いのでじっくりとお参りしようか。
お遍路の作法 お寺に着いてからの大まかな流れ
1.山門にて 合掌し、一礼する。
仏様が山門までお迎えに来て下さっていると感じる。
2.手水舎にて 手を洗い、口をすすぎ、清める
柄杓を右手に持ち左手を清める。柄杓を左手に持ち替え右手を清める。
柄杓を右手に持ち替え左手で取った水で口を清める。再度左手を清める。
柄杓を縦にし柄杓の柄を洗う。
3.鐘楼にて 鐘をつく
一礼し鐘は1回だけつく。自由につけない札所もある。
4.本堂にて 納札、写経、線香、灯明、お賽銭を納める。
納札は納札箱へ納める。写経は写経箱へ納める。
線香3本を真ん中から立てる。お祈り中にお迎えしている仏様を香でもてなすため。
ロウソク1本を奥から立てる。灯明は心に灯す知恵。
供物料としてお賽銭を納める。
念珠をすり、合掌しお経を唱える。
念珠は右手の中指と左手の人差し指に掛け一捻りさせる。
お経は勤行次第の要領で唱える。
5.大師堂にて 本堂と同じ要領でお参りする。
6.納経所にて ご朱印を頂く。
7.山門にて 合掌し、一礼する。
仏様が山門まで見送って下さると感じる。
読経方法
本堂または金堂での仏前勤行次第
合掌礼拝(がっしょうらいはい)
胸の前で合掌し三礼しながら「恭しく御仏を礼拝し奉る」と唱える(うやうやしく みほとけを らいはいし たてまつる)
↓
開経偈(かいきょうのげ)
「開経偈」を一返唱える
↓
懺悔文(さんげのもん)
「懺悔文」を一返唱える
↓
三帰依文(さんきえもん)
「三帰(さんき)・三竟(さんきょう)」を三返ずつ唱える
↓
十善戒(じゅうぜんかい)
「十善戒」を三返唱える
↓
発菩提心真言(ほつぼだいしんしんごん)
「発菩提心真言」を三返唱える
↓
三摩耶戒真言(さんまやかいしんごん)
「三摩耶戒真言」を三返唱える
↓
般若心経(はんにゃしんぎょう)
「般若心経」を一巻唱える
↓
ご本尊真言(ごほんぞんしんごん)
各札所の「本尊真言」を三返唱える
↓
光明真言(こうみょうしんごん)
「光明真言」を三返唱える
↓
ご詠歌(ごえいか)
各札所を讃嘆する「ご詠歌」を唱える
↓
ご宝号(ごほうごう)
お大師さまの「ご宝号」を三返唱える
↓
回向文(えこうもん)
「回向文」を一返唱える
↓
合掌礼拝(がっしょうらいはい)
「ありがとうございます」と述べ、合掌し礼拝する
読経方法
大師堂での勤行次第
合掌礼拝(がっしょうらいはい)
胸の前で合掌し三礼しながら「恭しく御仏を礼拝し奉る」と唱える(うやうやしく みほとけを らいはいし たてまつる)
↓
開経偈(かいきょうのげ)
「開経偈」を一返唱える
↓
懺悔文(さんげのもん)
「懺悔文」を一返唱える
↓
三帰依文(さんきえもん)
「三帰(さんき)・三竟(さんきょう)」を三返ずつ唱える
↓
十善戒(じゅうぜんかい)
「十善戒」を三返唱える
↓
発菩提心真言(ほつぼだいしんしんごん)
「発菩提心真言」を三返唱える
↓
三摩耶戒真言(さんまやかいしんごん)
「三摩耶戒真言」を三返唱える
↓
般若心経(はんにゃしんぎょう)
「般若心経」を一巻唱える
↓
光明真言(こうみょうしんごん)
「光明真言」を三返唱える
↓
ご和讃(ごわさん)
修行和讃(弘法大師1番ご詠歌)または入定和讃(弘法大師2番ご詠歌)を唱える
↓
ご宝号(ごほうごう)
お大師さまの「ご宝号」を三返唱える(南無大師遍照金剛)
↓
回向文(えこうもん)
「回向文」を一返唱える
↓
合掌礼拝(がっしょうらいはい)
「ありがとうございます」と述べ、合掌し礼拝する
「開経偈」(かいきょうげ)
無上甚深微妙法 百千万劫難遭遇 我今見聞得受持 願解如来真実義
むじょうじんじんみみょうほう ひゃくせんまんごうなんそうぐう がこんけんもんとくじゅじ がんげにょらいしんじつぎ
[この上ない深く尊い仏様の教えは、長い時間を経ようともなかなか出会う事はできません。私は今幸いにも巡り合い、手にする事ができました。ただ願うところは、仏様の本当の教えを体得したいものです。]
「懺悔文」(さんげのもん)
我借所造諸悪業 皆由無始貪瞋癡 従身語意之所生 一切我今皆懺悔
がしゃくしょぞうしょあくごう かいゆむしとんじんち じゅうしんごいししょしょう いっさいがこんかいさんげ
[私が昔から造ってきた色々の悪い行ないは、すべていつが始まりか知れないほどの避けがたい貪り(むさぼり)と、瞋(いかり)と、癡(まよい)とによる身(からだ)と口(ことば)と意(こころ)との三つの働きから生じたものです。それらすべての罪を私はいま悔い改めます。]
「三帰」(さんき)
弟子某甲 尽未来際 帰依仏 帰依法 帰依僧
でしむこう じんみらいさい きえぶつ きえほう きえそう
[仏様の弟子となった私は、いつまでも仏様を信仰し誠心を捧げます。仏様の説かれた教えを信仰し誠心を捧げます。仏様の教えを実践する人々を信仰し誠心を捧げます。]
「三竟」(さんきょう)
弟子某甲 尽未来際 帰依仏竟 帰依法竟 帰依僧竟
でしむこう じんみらいさい きえぶっきょう きえほうきょう きえそうきょう
[仏様の弟子となった私は、いつまでも仏様を信仰し誠心をささげ竟ったことを確信しました。仏様の説かれた教えを信仰し誠心をささげ竟ったことを確信しました。仏様の教えを実践する人々を信仰し誠心をささげ竟った事を確信しました。]
「十善戒」(じゅうぜんかい)
弟子某甲 尽未来際 不殺生 不偸盗 不邪淫 不妄語 不綺語 不悪口 不両舌 不慳貪 不瞋恚 不邪見
(でしむこう じんみらいさい ふせっしょう ふちゅうとう ふじゃいん ふもうご ふきご ふあっく ふりょうぜつ ふけんどん ふしんに ふじゃけん)
[仏様の弟子となった私は、いつまでも殺生をしません。物を盗みません。ふしだらな行為をしません。嘘偽りを言いません。心にもない綺麗ごとを言いません。悪口を言いません。信用を失うことを言いません。物を慳(おし)み欲ばったりしません。怒り憎むことをしません。間違った考え方をしません。]
「発菩提心真言」(ほつぼだいしんしんごん)
おん ぼうぢ しった ぼだはだやみ
[私は悟りを求める心を興します。]
「三摩耶戒真言」(さんまやかいしんごん)
おん さんまや さとばん
[あなたは仏様と一体平等であります。]
「般若心経」(はんにゃしんぎょう)
仏説摩訶般若波羅蜜多心経
ぶっせつまかはんにゃはらみたしんぎょう
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空
かんじざいぼさつ ぎょうじんはんにゃはらみたじ しょうけんごうんかいくう
度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空
どいっさいくやく しゃりし しきふいくう くうふいしき しきそくぜくう
空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相
くうそくぜしき じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ しゃりし ぜしょほうくうそう
不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中
ふしょうふめつ ふくふじょう ふぞうふげん ぜこくうちゅう
無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法
むしき むじゅそうぎょうしき むげんにびぜっしんに むしきしょうこうみそくほう
無眼界 乃至無意識界 無無明亦 無無明尽
むげんかい ないしむいしきかい むむみょう やくむむみょうじん
乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得
ないしむろうし やくむろうしじん むくしゅうめつどう むちやくむとく
以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故
いむしょとっこ ぼだいさった えはんにゃはらみたこ
心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想
しんむけげ むけげこ むうくふ おんりいっさいてんどうむそう
究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故
くぎょうねはん さんぜしょぶつ えはんにゃはらみたこ
得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
とくあのくたらさんみゃくさんぼだい こちはんにゃはらみた
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪
ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ
能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多呪
のうじょいっさいく しんじつふこ こせつはんにゃはらみたしゅ
即説呪日 羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦
そくせつしゅわつ ぎゃて ぎゃて はらぎゃて はらそうぎゃて
菩提薩婆訶 般若心経
ぼじそわか はんにゃしんぎょう
「観音さまは深い智慧に至る修行をし、この世界をなす五つの要素に実体はないと知り、苦を離れ、悟りを得られたのだ。」 舎利子(お釈迦様の弟子の名前)よ、「姿あるものは常に移り変わる。移り変わり、姿を変えるのが我々が生きる世界の本当のあり方だから、目に映り、感じ、想い、行い、知り得たと思うことに、実体はない。」舎利子よ、「仏の目で見ればこの世は移り変わっているだけなのだ。生じているのではない、滅してもいない。汚れもせず、汚れを離れることもなく、増えも、減りもしない。」舎利子よ、「移り変わる世界で、自分が目にし、心に思い、行い、知ったと思うことも実は存在しない。眼や、耳、鼻、舌、身体、心に映るもの、ものの姿、声、香り、味わい、触り心地、ここちよさも移ろうだけのものである。眼にうつり、意識されるものに実体は無く、迷い、悟り、老い、死、老いと死がなくなることも空そのものである。苦も、苦の原因も、苦の消滅も、苦を抑える道も…そして知ること、得ることすら実は存在しない。移ろうものをとらえられないように。観音さまは、般若波羅蜜多によって心を安んじていて、自分と他者を区別することもない。その状態に安住しているから、何に対する恐れもない。顛倒した心を遠く離れて、永遠の安らぎに入っているのだよ。過去・現在・未来の三世のなかでこの真理に目ざめる人々は、永遠の安らぎを与える般若波羅蜜多の智慧によって、この上ない悟りの状態に入るのだ。 その般若の智慧は大いなる真言である。大いなるさとりの真言、無上の真言、無比の真言であり、全ての苦しみを取り除く。般若波羅蜜多の呪文なのだ。」その真言は次のように説かれている。ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテー ボーディ スヴァーハー(仏の世界へ渡らん。渡らん。悟りの岸へ全く渡らん。無上の悟りにはいり、安らぎを成就させたまえ。)
「御本尊真言」(ごほんぞんしんごん)
不動明王
のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだそわたや うん たらた かんまん
(十方世界の力強い仏様に帰依いたします。その偉大な破壊力で、私達の煩悩や苦しみを打ち砕いて下さい。)
釈迦如来
のうまく さんまんだ ぼだなんばく
(お釈迦様を始めとする十方の仏様、どうか私に悟りを得させてください。)
文殊菩薩
おん あらはしゃ のう
(仏の智慧があふれている文殊様、私達が悟りを求めているこの気持ちをお汲みとり下さい。そして「この世の一切のことは、もともと空である」と言う宇宙の真理を私達に体得させて下さい。)
普賢菩薩
おん さんまや さとばん
(どうか私たちをお守り下さい。本来の仏性を開顕させて下さい。)
地蔵菩薩
おん かかかび さんまえい そわか
(修行が完成してすべての人々に珍しい宝物をお恵みくださるお地蔵様、どうか、私達に大地のような徳を与えて下さい。)
弥勒菩薩
おん まい たれいや そわか
(慈しみの心にあふれた弥勒様、どうか私の祈願を叶えて下さい。)
薬師如来
おん ころころ せんだり まとうぎ そわか
(どんな強敵でも踏みつぶす、象王のようなお薬師さま。私達の体や心に住みついている病気や苦しみを早く取り除いて下さい。)
聖観世音菩薩
おん あろりきゃ そわか
(柔和なお心でどんな考えにもとらわれない観音様。どうか私たちのそれぞれの念願をかなえて下さい。)
勢至菩薩
おん さん ざん ざん さく そわか
(どうか私たちが地獄道や餓鬼道のような心になることからお守り下さい。)
阿弥陀如来
おん あみりた ていせいから うん
(不滅のご威光を持たれている阿弥陀様、どうか私を悟りの世界へお導き下さい。)
阿閦如来
おん あきしゅびや うん
(どうぞ私が怒りの心を離れて、悟りが開けるようにお導き下さい。)
大日如来
おん あびらうんけん ばざらだとばん
(永遠で不滅の光を持っておられる大日如来様に帰依いたします。どうか私を悟りの世界に入れて下さい。)
虚空蔵菩薩
のうぼう あきゃしゃ きゃらばや おん ありきゃ まりぼり そわか
(虚空蔵菩薩様に心から帰依いたします。どうか私の願いを叶えさせて下さい。)
千手観世音菩薩
おん ばざらたらま きりく
(どうか強い慈悲のお心で私達の煩悩を打ち砕いて下さい。)
十一面観世音菩薩
おん まか きゃろにきゃ そわか
(どうか大きな慈しみと、哀れみのお心を私たちに注いで下さい。)
馬頭観世音菩薩
おん あみりと どはんば うんはった そわか
(馬が食べ物を食べ尽くすように、どうか私の煩悩を食べ尽くして下さい。)
毘沙門天
おん べいしらまんだや そわか
(この上なき尊い御名を持つ毘沙門天様に帰依します。すべて吉祥成就)
大通智勝如来
なむ だいつうち しょうぶつ
(大通智勝仏様、心から敬い、信心をささげます。)
「光明真言」(こうみょうしんごん)
おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はらばりたや うん
[我と世界の根底から願う なすべきことを現実にする実行力よ あまねくゆきわたる存在力よ 生命に宿れる向上力よ 自他を大事にする生み出す意思力よ 苦しみを見のがさない観自在力よ 生きとし生けるものの幸いを 生き生きと活動あれ 努力あれ]
「大師御宝号」(だいしごほうごう)
南無大師遍照金剛
なむだいしへんじょうこんごう
[まごころをこめて、弘法大師様と、弘法大師様のお導きとお救いの慈徳を敬い、信心をささげます。]
高祖弘法大師 第1番
ありがたや 高野の山の岩かげに 大師はいまだ おわしますなる
[ああ ありがたい(弘法大師様はずっと昔に御人定されたにもかかわらず)高野山の奥之院には今だに弘法大師様がおられ、私達を見守りおすくい下さるんだなあ]
高祖弘法大師 第2番
高野山 結ぶ庵に袖朽ちて 苔の下にぞ 有明の月
[高野山の小さな庵の中で袈裟衣が破くれ朽ちながらも私達を救い続けておられる姿は、あたかも、夜を有咀の月が照らすごとく、世間を照らしているようだ。]
「回向文」(えこうもん)
願以此功徳 普及於一切 我等与衆生 皆共成仏道
がんにしくどく ふぎゅうおいっさい がとうよしゅじょう かいぐじょうぶつどう
[願うところは、お経をお唱えすることに得られた信心のよろこび(功徳)をすべての人々にわかち与えて、私たちとすべての人々が共にみな仏道を精進しましょう。]