浜寺公園から天王寺 阪堺電車を追ってゆく

我が家の車の修理や車検は、訳あって堺にある知人の自動車整備工場にお願いをしている。この日は車検に出すため堺の整備工場までやってきた。仕事用の車があるので車検期間中の代車は要らないよ、と告げていた。車を整備工場に預け、車に積んできた自転車で帰ることにしていた。家まで40kmほど、さあどのルートを進もうか。

ぶらぶらっと方向感覚だけを頼りに進んでいると、浜寺公園が見えてきた。浜寺公園の中を突き進み、やがて阪堺電車の浜寺駅前電停にたどり着く。

大阪の天王寺と恵美須町から堺 浜寺公園まで、チンチン電車が走っている。その名は阪堺電気軌道、略して阪堺電車。明治30年に設立された大阪馬車鉄道株式会社を起源に120年以上の歴史を持つ由緒正しい鉄道会社。現在は恵美須町から浜寺駅前の阪堺線14.0kmと天王寺駅前から住吉の上町線4.3kmの2路線で運行されている。

よし、阪堺電車の線路に沿って帰ろう。

日中は12分おきに発車する。

浜寺駅前電停の前に広がる浜寺公園。ここまで公園内を走ってきた。「名松100選」の美しい松林を誇る公園で、明治6年に指定された大阪で最も古い公園。園内にはジャイアントスライダーのあるプール、ばら庭園、交通遊園などがある。10年ほど前にバーベキューしてモノマネで盛り上がったなぁ。

浜寺駅前電停の東側には南海電車の浜寺公園駅。

明治40年(1907)に建てられたこの駅舎は、東京駅などの設計で知られる辰野金吾博士が所属した辰野・片岡建築事務所の設計によるもの。平成10年(1998)に国の登録文化財となった。

発車時刻2分前だが、運転手はまだ乗っていない。

モ353は定刻に浜寺駅前を発車、超低床型車両の1002「紫おん」とすれ違う。

南海本線をガードで越えるため坂を上り走り去って行った。

浜寺駅前と船尾の間は南海本線をまたぐ。

石津川を渡る1002「紫おん」

東湊を発車するモ705。

御陵前に到着するモ710。大道筋は路面区間のような専用軌道。

フェニックス通りを越えて行く。

超低床型車両の1001「茶ちゃ」

堺刃物のメーカー和泉利器製作所の前を通り過ぎるモ703。

神明町付近を走るモ351.

大道筋を走ってきたチンチン電車は綾ノ町から専用軌道に入って行く。

大和川を渡ると大阪市に入る。大和川の水質は、一級河川の中で平成17年から3年連続して全国ワーストワン。

我孫子道に到着するモ166。

我孫子道車庫を勝手に無断でのぞいてみる。平成28年6月に廃車となったモ170や、京都市電から来たモ256、水色雲模様の電車モ351が静かにたたずんでいる。

浜寺駅前で見送ったモ353。もう天王寺から折り返してきたのね。というか、自分が寄り道しすぎで遅いンだな。

専用軌道を走ってきたチンチン電車は住吉大社前から路面電車となる。

住吉大社の目の前を走り抜ける。

電停の名称は住吉鳥居前。確かに鳥居の前だな。住吉大社は、神功皇后摂政11年(西暦211年)に鎮座され、伊弉諾尊が禊祓を行われた際に海中より出現された底筒男命・中筒男命・表筒男命の三神、そして当社鎮斎の神功皇后を祭神とする。摂津国 一之宮で、全国約2,300社ある住吉神社の総本社。

住吉電停で阪堺線と上町線に分岐する。阪堺線を行くと恵美須町へ、上町線を行くと天王寺駅前。

直進する阪堺線は東玉出まで路面電車となる。阪堺線に沿って東粉浜まで来たが、上町線に沿って進もうと思い、右に折れた。

上町線は、神ノ木で南海電車高野線を越えて行く。

上町線の路面区間の道幅はとても狭いのだ。

狭すぎて車は電停横を通れない。なので車はみんな線路の上を走っている。

北畠付近。自転車でも楽々ついて行ける。

北畠を過ぎると専用軌道となり、次の東天下茶屋に向けてスピードを上げ走り去って行った。

下町のごみごみとした街中を走る。

阿倍野。終点まであとひとつ。

あべのハルカスの足元を走る。

終点の天王寺駅前に到着。乗降客は結構多い。

再開発された「あべのキューズモール」と、日本一の高さの「あべのハルカス」に挟まれた、新しくなった天王寺駅前電停。元の場所よりも少しだけ西側に移設し、新しく都会的になったが、レトロを愛する者としては寂しい気がする。なので間も無く取り壊される阪堺線の起点恵美須町電停にも寄ってみよう。

新世界を通り抜け、恵美須町駅を目指す。

新世界 通天閣本通りの目の前に恵美須町駅はある。

阪堺線 恵美須町駅。バリケードで塞がれ閉鎖されている。2020年2月に南側100mの場所に新規移転してしまった。

終点の浜寺駅前まで直通運転していたのは、ここ恵美須町から発車する電車のみであった。今は、恵美須町からの電車は我孫子道止まり。

2線4面の規模を誇っていた。すでにレールと架線は外されている。

ホームの端に建つ木造の詰所が哀愁漂う。