古都京都の文化財 高山寺

栂尾の山深い地を流れる清滝川のほとりに建つ高山寺は、平成6年に「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録された。

高山寺の開基は栂尾にあった神護寺の別院で「神護寺別院」、「神護寺十无盡院」などと呼ばれていた。建永元年(1206)11月、後鳥羽上皇より明恵上人が栂尾の地を下賜し寺号が高山寺となった。当時は浄土宗や臨済宗など鎌倉新仏教が勃興しており、それらの新仏教に対抗するため華厳宗や真言宗の道場として伽藍を整備した。金堂や十三重塔も造られたが応仁の乱により焼失してしまった。その後、1634年に織田、豊臣、徳川の寄進により再興した。

この日訪れた高山寺は、平成30年9月の台風災害による大規模修復工事中。でも、すばらしい紅葉を奥さんに見せたくて若干の不安を胸に参拝してみた。

栂尾山 高山寺。

平成30年9月の台風災害による大規模修復工事中。表参道には鉄板が敷かれ、重機が入れるようにしてある。嫌な予感しかしない。

かつて大門があった場所には石灯籠が立っている。災害前のこの場所には17枚の正方形の石敷きが連なり、この時期はその参道に紅葉の落ち葉で色鮮やかに染まり、周りは紅葉の木々に覆われそれは美しい参道だったはず。

災害前は、そう、こんな感じ。この景色が見たくて参拝したが、来年の紅葉の時期までお預けとしておく。

金堂へと続く道も工事中。ココから先へは立ち入ることすらできない。金堂も修理中のようだ。金堂は江戸時代寛永年間(1624〜44)に御室仁和寺真光院から古御堂を移築したもの。承久元年(1219)に完成し室町時代に焼失したかつての本堂の位置に立つ。

災害前は、そう、こんな感じ。イイ雰囲気だなぁ。次回の参拝までお預けだ。

栄西禅師が宋から持ち帰った茶の実を明恵上人が山内で植え育てたところ、眠りを覚ます効果があるので衆僧にすすめたという。最古の茶園は清滝川の対岸の深瀬三本木にあった。「日本最古之茶園」と書かれた石碑が立つ現在の茶園は、もと高山寺の中心的僧房十無尽院があった場所。

5月中旬に茶摘みが行われるそうだ。

明恵上人が晩年を過ごし入寂した禅堂院の跡地に建つ開山堂も工事中のため立ち入ることができない。という事で、残念ながら今は石水院しか見所が無い。

国宝 石水院。 もとの石水院は東経蔵の谷向いにあったが、安貞2年(1228)の洪水で崩壊した。その後、東経蔵が春日・住吉明神をまつり、石水院として中心的なお堂となる。寛永14年(1637)の古図では、春日・住吉を祀る内陣と五重棚を持つ顕経蔵・密経蔵とで構成される経蔵兼社殿となっている。

創建当時、現在の石水院は東経蔵として金堂の東に建っていたが、明治22年(1889)に現在地へ移築された。

国宝の石水院は、桁行正面3間、背面4間、梁間3間、正面1間通り庇。一重入母屋造、妻入、向拝付、葺。五所堂とも呼ばれる。

客殿から渡り廊下を進むと、石水院の西側の庭園がひらける。

石水院 廂の間。石水院の西正面は、かつて春日・住吉明神の拝殿であったところ。落板敷の中央に、今は小さな善財童子の像が置かれている。

正面には神殿構の板扉が残る。吊り上げの蔀戸、菱格子戸、本蟇股によって、内と外の境界はあいまいにされ、深い軒が生む翳りの先に光があふれる。

華厳経にその求法の旅が語られる善財童子を明恵は敬愛し、住房には善財五十五善知識の絵を掛け、善財童子の木像を置いたという。

日出先照高山之寺の額。 建永元年(1206)に後鳥羽院より華厳興隆の勝地として明恵上人が栂尾の地を賜り、その際に下賜された後鳥羽院宸翰の勅額といわれる。

石水院の南面の縁側から一歩下がって畳の上に腰をおろすと、風景と女子が柱と蔀戸、広縁によって額縁のように切り取られる。

おだやかな日差しと紅葉の色彩にいやされる。。

癒しを求めて縁側に落ち着く。

清滝川を越えた向いの山を望むことができる、しばし浮世のストレスから解放される。

運慶作の犬。明恵上人が可愛がっていたという木彫りの犬。

鳥獣人物戯画。日本で最初のマンガといわれる。甲乙丙丁の4巻で構成され、甲巻は擬人化された動物、乙巻は実在と空想上の動物図譜、丙巻は前半が人間風俗画で後半が動物戯画、丁巻は勝負事を中心とした人物が描かれている。高山寺にあるのはレプリカで、本物は甲丙巻が東京国立博物館、乙丁巻が京都国立博物館に保管されている。

ウサギをカエル達が取り囲み、遊んでいるのかイジメているのか、そんな感じのマンガ。実は相撲をとっているらしい。

カエルとウサギがイノシシや鹿を捕まえ、サルに売り飛ばそうとしているのか、そんな感じのマンガ。

明恵上人樹上坐禅像。 縄床樹に座る明恵上人を描いたもので恵日坊成忍の作。背景には小鳥やリスが画かれている。

帰りは裏参道から苔に覆われた石垣と草木の中をつづら折に降りていく。車やバスで参拝するにはこちらから入るほうが近道ではある。

高山寺のソバに建つ「とが乃茶屋」で昼ごはん。

自分は山菜うどん、奥さんは鍋焼きうどんを食す。モチが入った鍋焼きうどんの方が良かったンちゃう。

川沿いの座敷に案内され、川床と紅葉を満喫しながらうどんをすすった。

お店を利用すると、柚子をサービスで頂ける。持って帰って柚子ティーと洒落込もう。