泊りでへんろ お鶴太龍 再挑戦 その1

前回、鶴林寺に挑んだが、熱中症とおぼしき症状で挫折を味わった。真夏に自転車で急坂を草履で登り、途中ポカリスウェットが崖下へ転がり落ち、飲み物が無くなるというアクシデントでさすがにきつかった。もうすぐ初秋の三連休、予定していた連休後半のイベントが急遽無くなってしまった。季節も良く突発的に鶴林寺、太龍寺への再挑戦に出向きたくなる。同行者を募るが連休の予定は皆詰まっているようだ。いつも言い出すのが急過ぎるとボヤかれながら、ひとりで行く決心を固めた。ワイワイと皆で自転車旅は楽しいが、やはり遍路旅はひとりで打つのが良い気がする。

「四國徧禮道指南」では、大坂から徳島に渡海するときは、堂島の玉江橋の阿波屋勘左衛門に方法を聞けとある。船賃は銀二匁だそう。阿波屋勘左衛門さんはすでにこの世にはいないので、徳島への行き方を調べ考えた。「とくしま好きっぷ2000」という、南海難波駅から和歌山港駅までの電車代と徳島港までの南海フェリー代がセットで2,000円というお得な切符で行くことにする。通常フェリー代だけで2,000円なので、電車代が丸々タダということになる。大阪から徳島まで移動する公共交通機関では、高速バスの平日最安値にはかなわないが自転車を乗せられるので好都合だ。

という訳で今回の計画は、南海電車で難波から和歌山まで行き、南海フェリーで徳島に渡り四国入りする一泊二日の旅。四国遍路の難所、鶴林寺、大龍寺を登り、平等寺の宿坊に泊まる。翌日は薬王寺を打ち、高知県の甲浦まで走り徳島県阿波の国を制覇したい。甲浦駅からは列車輪行で徳島まで戻り、再び南海フェリーで海を渡り和歌山経由で帰宅する計画。

三連休初日は、リトルグリーモンスターのコンサートが行われる三重県四日市まで娘を送らなければならない。娘はどうやら大阪でのコンサートには日程が合わなかったようで、娘の泣きのお願いを聞き入れた。自宅から車で2時間ほどの距離、コンサートは夜の7時からなのにグッズを買うため午前中に出発し四日市を目指す。昼過ぎに娘と娘の友達をコンサート会場に降ろし、嫁さんと近鉄四日市駅前をブラブラする。トンテキを食べ商店街など見て歩くが時間を持て余す。コンサートの当日券が発売される様なので急遽行く事にした。チケットが完売されてないとはリトグリもまだまだかなと思いきや、実際は関係者席としてあらかじめ確保していた空席部分を埋めるために当日券として売り出している様だ。会場はほぼ満員、なのに関係者席は会場の中央のとても見やすい良い席で、早くから前売りを買った人たちには申し訳ない感じがする。やっぱりリトグリは歌うまいねぇ。迫力あるステージを満喫し、自宅到着は夜中の12時過ぎ。翌朝5時過ぎの電車に乗らなければならないのに、まだなんの準備もしていない。お鶴太龍の遍路ころがしを超えなければならないのに。睡眠時間が3時間程しかないバッドコンディション。前回、挫折した悪夢がよみがえる。奥さんの冷ややかな視線を気にしながら必死で準備し1時半に寝た。

4時半に目覚ましが鳴るが睡眠不足で気分が悪い。おまけにこの季節、まだまだ夜は明けない。気分の悪いまま闇夜の中、最寄りの駅へ自転車を踏み出す。駅前で自転車のタイヤをはずし輪行バックへ詰め込み電車に乗る。早朝ながらシートはほぼ埋まっている。そして大阪駅で環状線に乗り換える。大都会の巨大ターミナルで自転車を詰めた輪行バックを担ぎリュックを背負い歩く。早朝だがこれがけっこう気恥ずかしい。環状線201系はハリーポッターにラッピングされた電車だった。

新今宮駅で南海電車に乗り換え、「とくしま好きっぷ2000」で和歌山へ向かう。南海電車はこの前の台風で樽井駅と尾崎駅との間の鉄橋が沈下し、ひと駅区間が単線運行となっていて間引きされた臨時ダイヤとなっている。おまけに和歌山行きの特急サザンは全便運休中。なので空港急行で泉佐野駅まで行き普通車に乗り換え和歌山市駅へ。そして和歌山市駅から和歌山港駅へ乗り継いで行く。特急サザンだと乗り換え無しの54分で着くところ、現在は乗り換え二回1時間33分も掛かる。自転車かついでの乗り換えは寝不足の今とてもしんどく、電車内の置き場所を確保するのにとてもストレスが掛かる。でも好きでやっているのでしょうがない。

ちょっと寄り道、和歌山市駅で降りて和歌山港駅まで自転車で行く。標高48.9mの虎伏山に建つ和歌山城を見たいがため。和歌山城は、天正13年(1585年)に紀州を平定した豊臣秀吉が、弟の豊臣秀長に築城させたのが始まり。まず、秀長の城代として桑山重晴が入り、慶長5年(1600年)には、関ヶ原の戦いで功をたてた浅野幸長が入城。そして、元和5年(1619年)には徳川家康の第10男・頼宣が入城し、紀州55万5千石の城となり、以来、水戸・尾張と並び、徳川御三家のひとつとして、長い歴史を刻んできた。ゆっくり城見物したいが、今日はお遍路。フェリーに間に合わなくなる。

出航15分前に和歌山港駅に到着。駅は南海フェリーターミナルに直結している。長い連絡通路がフェリー乗り場まで続いており、自転車を担いで歩いていくと、途中にムービングウォークがあり束の間の休憩ができる。

フェリーの全体像を見ないままに、チケットを見せフェリーの後方デッキから乗船する。

南海フェリーには「フェリーかつらぎ」と「フェリーつるぎ」の2隻が就航している。今日乗船したのは「フェリーかつらぎ」。全体像が見えないので画像はホームページから。

■全長/108.00m ■全幅/17.50m ■深さ/6.10m
■吃水(満 載)/4.40m ■総トン数/2,620t
■速力(連続最大出力)/21.60ノット
■主機関/新潟6MG41HX×2基(連続最大出力)5,400ps/500R.P.M.×2基)
■旅客定員/427名
■最大搭載車両台数/8tトラック換算39台
■車両甲板の高さ/4.30m
■特殊船型及び設備/船尾双胴型、機関室無人化船。
フラップラダー、可変ピッチプロペラ、バウスラスター及びジョイスティックコントロールを装備。

自転車に乗ったまま乗船すると700円と有料だが、輪行バックに入れ持ち込めば無料だ。すでにデッキの柵にはロードバイクが2台ほど輪行バックに入り立て掛けられているので少し離して立て掛けておく。ひとまず電車とフェリー乗船までの輪行終了、気ぜわしいのとマウンテンバイクが重いので顔面は汗だく。

8時30分定刻に和歌山港を出航。船内に入るとすでに座席はほぼ埋まり、ごろ寝スペースもほぼ埋まっている。車やバイクで乗船する人はかなり早くから乗船しているようだ。汗ばんでいるのでしばらくデッキで風に打たれる。やっぱりフェリーには気分が高揚する何かがある。海原を進む景色もそうだが、ディーゼルエンジンの匂いや音、船の振動、大きくゆっくりと傾く船体の揺れ。どれも懐かしく旅情感を掻き立てる。

イマイチ曇り空で残念だが、デッキは潮風で気持ちがいい。かつて四国の人間にとってフェリーはとても身近な存在だった。本四連絡橋ができ、めっきりフェリーを使わなくなった。

嬉しさのあまり船内やデッキをうろつき写真を撮りまくる。

ひと通り船内を徘徊し、運良く三人並びのシートの奥が2席空いていたので、ねじ込ませてもらう。ひとつ跳ばした隣の席はキリッとしたお姉さん。「一人旅ですか?」などと、今は聞かない。

シートに荷物を置いたまま朝メシを調達しに売店に行く。かわいい係員のお姉さんから「四あ和せ弁当」500円也を買う。

テーブル席も満員だが、ボックス机のWi-Fiシートに空きがあったので陣取り「四あ和せ弁当」とお茶で朝食タイム。お茶よりも朝からビールがよかったが、寝不足と飲酒で遍路ころがしはキツイと判断、なんとか自制することができた。

Wi-Fiシートにはコンセントもありスマホを充電しながら弁当を食べた。

気が付くとWi-Fiシートの机に突っ伏し爆睡していて、徳島港に到着したアナウンスで目が覚めた。しまった、キリッとしたお姉さんと話しそびれた。売店の横に下船する人の列が出来ている。乗船時とは違う場所から下船するようだ。デッキに自転車を取りに行くと、輪行バックに白い粉が吹いている。ザラザラとした粉を軽く舐めてみると塩の結晶のよう。水しぶきはデッキにまでビシバシ飛んで来るようだ。帰りは船内に置いておこう。

定刻より5分ほど早く徳島港に到着。バスを待つ間、ターミナルビルの裏に回るとフェリーかつらぎが見える。が、後ろ半分しか見られず、結局和歌山でも徳島でもフェリーの全貌は見ることができなかった。

徳島港フェリーターミナル前から徳島駅前まで徳島市営バスに乗る。乗船客10名ぐらいがバスに乗り込んだ。おおっ!フェリーで隣の席だったキリッとしたお姉さんも乗っている。でも停留所に停まるごとに3人4人とお年寄りが乗ってきて、満員状態となり話す機会はなかった。輪行自転車と背中に背負っているリュックが満員の車内ではとてもとても迷惑だ。

市営バスは定刻よりも15分遅れで徳島駅前に着いた。徳島駅前から徳島バス勝浦線に乗り換えるが、市営バスが遅れたせいで乗り継ぎ時間が少なく焦り気味に勝浦線の乗り場まで行き、徳島駅前11時20分発の徳島バス勝浦線に乗る。

バスはのんびりペースで小松島市内を経由し、やがて勝浦川に沿って田舎へ田舎へと進んで行く。

徳島駅前から1時間10分、定刻より15分遅れで生名バス停に降り立つ。運賃は740円なり。体力温存のためのバス輪行だったが何だか気疲れ気味。しかし筋力温存はできている。生名バス停の向かいにある消防団の詰所前で自転車をセッティング。消防団の方と挨拶し、近くのホームセンターコメリでかわいい店員さんから軍手とゴムひも、アクエリ2本を調達。サークルKのきれいな店員さんからおにぎりとウィダーを調達、さて準備は整った。

生名バス停から鶴林寺まで車道のルートを「ルートラボ」で標高マップを描くとこんな感じ。

2回目の訪問なので歩きへんろ道はチョイスせず、迷うことなく車道を進む。ここから5kmのヒルクライム再チャレンジ。13時02分出発。

早生みかん、一袋200円なり。安っ! 買いたいが自転車で山を登ろうとしている今はオモリにしかならない。

いきなりの急坂。体がなじむまでは非常にしんどい。お遍路さんの乗用車やワンボックス車、地元の軽トラなど意外と交通量がある。追い抜いていく車からの視線はアホを見る目なのかハタマタすごいなという目なのか、アホを見る目に見えてしょうがない。

急坂を5~6分。だいぶん高度が上がってきた。

前回、ポカリスウェットを2本とも崖下に転がり落とし、飲み物レスになったのはこの辺りだったか。

真夏の前回はすでに全身から汗がボタボタ流れ出て、自転車を押し歩いていたが、今回は自転車から降りることなく登って行ける。

湧き水が小さな滝となって流れていたり。前回は気付いていなかった。

坂道は続く。呼吸が乱れ心臓バクバクだが、自転車を降りず立ち漕ぎもせずなんとか登る。季節の気温コンディションによる違いはものすごく大きい。

走りながら撮影するとやはり手ブレ。

大きな岩が転がっている。弘法大師さんのいわくは無さそう。そりゃそうだ、ここは車道で近年できた道。古(イニシエ)のへんろ道ではない。

すこし視界が開ける。道も少しばかりフラットになり呼吸が落ち着く。

左に行くと山を下って太龍時方面。鶴林寺は右に進む。ここまで25分、かなりなローペース、このあと太龍寺も控えているので無理はせず。鶴林寺まであと2km。

一段と急坂になってくる。写真には急坂具合が写らないが心臓バクバクもんの急坂。先のほうにベンチが見える。

ベンチのところは車道がへんろ道を横切る地点。へんろ道は山を直線的に登ってくるので距離は短いが坂道の角度がすごい鋭角。へんろ道だとあと900m、車道だとどんだけ~

上りのへんろ道の反対側には下りのへんろ道が続く。焼山寺のへんろ道とは違いきちんと整備されている。ここを自転車担いで登ってくるツワモノもいるようだ。

九十九折りの車道は、さっき通った道が崖下の木々の間から見える。こんなにも喘ぎながら坂道を進んで高度を稼いでいるが、直線距離ではわずかしか進んでいない。

またへんろ道と出会う。このあたりは整備された石段。へんろ道はあと400m。大回りの車道はあとどんだけ~

ようやく駐車場。車はここまで、車両通行止めだけど自転車は行けそう。あと100m!

第二十番札所 霊鷲山 宝珠院 鶴林寺

寺伝によると延暦17年、桓武天皇(在位781~806年)の勅願により、弘法大師によって開創された。大師がこの山で修行していたとき、雌雄2羽の白鶴がかわるがわる翼をひろげて老杉のこずえに舞い降り、小さな黄金のお地蔵さんを守護していた。この情景を見て歓喜した大師は、近くにあった霊木で高さ90センチほどの地蔵菩薩像を彫造、その胎内に5.5センチぐらいの黄金の地蔵さんを納めて本尊とし、寺名を鶴林寺にしたといわれる。また、境内の山容がインドで釈尊が説法をしたと伝えられる霊鷲山に似ていることから、山号は「霊鷲山」と定められた。

桓武天皇、平城天皇、嵯峨天皇、淳和天皇と歴代天皇の帰依が篤く、また源頼朝や義経、三好長治、蜂須賀家政などの武将にも深く信仰されて、七堂伽藍の修築や寺領の寄進をうけるなど寺運は大きく栄えた。阿波一帯の寺が兵火に遭遇した「天正(1573~1592年)の兵火」にも、山頂の難所にあるためか難を免れている。

標高550メートルの鷲が尾の山頂にあり、遠く紀州や淡路の山峰、遙かに太平洋を眺望できる風光明媚な霊山が境内である。樹齢千年を超すような老杉、檜や松の巨木が参道を覆っており、寺門は静謐ながら隆盛の面影をしのばせる。「お鶴」「お鶴さん」などと親しまれ、山鳥が舞う大自然そのままの寺である。

車で登ってきた参拝者は皆さん寒そうに歩いている。自分だけ半袖、汗だくでアホっぽい。

鶴林寺 山門到着。今回は自転車を降りることなく48分で登りきる。なんだか嬉しいが、ロードバイクは足つきなしで25分を切るようだ。写真とか撮ってたし、この先太龍寺もあるし、体力温存しときたいし、まぁこんなもんでしょ。と、自分で自分を納得させる。

しぶい山門。仁王様と鶴がいる。

鶴林寺だけに鶴のオブジェ。

紅葉はもうすぐ見ごろ。今日はちと早かった。

鶴林寺本堂。こちらにも鶴のオブジェ。

しぶい本堂。寺紋はやはり鶴をデザインしている。

境内には三重塔がある。

こちらが太子堂。

納経所で朱印帳を2冊分お願いすると900円とオバちゃんに言われる。なんでやねん300円×2冊で600円ちゃうのかいと心の中で思い、お金を払うのを躊躇していると、申し訳なさそうに駐車場代として300円お願いしていると言われる。車ではなく自転車で来たというと、ホントは自転車も300円だけど内緒でサービスしてあげるから600円でいいよとの事。得したのかそうでもないのか分からないまま、霊鷲山 宝珠院 鶴林寺をゲット。